7月9日 今日から個人事業主だ!
来た!
待ち望んだ朝が来た。
今日は税務署と都道府県税事務所に開業の為の必要書類を提出しにいくのだ。
昨晩はゆっくりと眠れた。
今ではワクワクドキドキが止まらない。
ふとんからのそのそと這い出し、大きく深呼吸をした。
昨日とはまったくの別人のような気分だ。
今日から新生活が始まるのだ。
今まではずっと「フリーター」という身分だった。
「フリーター」=「定職につかずアルバイトで食いつないでいる人」
それが「個人事業主」という一国の主へと変貌を遂げるのだ。
テンションが上がらずにはいられまい。
朝、いつもと同じ時間に起きて(この頃毎朝8時に起きて、朝の連ドラを見ながら朝ご飯を食べるのが日課だった。)、
いつものように準備をし、家を出た。
税務署と東京都税事務所は反対方向にある。
家はちょうど真ん中ぐらいにあり、片道自転車で15分といったところか。
季節は夏。
少し動けばじっとりとした汗がにじむ季節だ。
何で向かうか?
もちろんママチャリだ。
タクシーやバスなどもってのほかだ。
こんなところで無駄遣いする訳にはいかない。
時間はたくさんあるのだ。
(実際には時間はたくさんはない。この時はお金>時間だったのだ。)
ママチャリを漕ぐのは好きだ。
ママチャリに乗って熱海まで行った事すらある。
俺の船出にはママチャリがぴったりだ。
家を出る。
ゆっくりと漕ぎ始める。
漕ぎ始めて数分後には汗でびっしょりだ。
いつもなら苛立ちを覚える汗も、今日はなんだか心地いい。
自分の漕いでいる姿をすれ違うみんなが見ているような気がする。
ママチャリ最高!夏の日差し最高!
片道15分の時間が短くさえ感じられてしまう。
「CEO」
「そう、俺はCEO。」
実際には「CEO」ではない。
「CEO」は法人で、しかもアメリカ国内での最高経営責任者を指すのだ。
俺はただの個人事業主だ。
しかもまだ一円もお金を稼げていないのである。
しかしその時の俺にはそんなことはどうでもよかったのだ。
見当違いな名前を心の中で連呼する俺。
きっとこれを読んでくれている人も失笑だろう。
そんなこんなでまずは東京都税事務所に到着。
ママチャリから颯爽と降りた時だった。
「汗がヤバい。」
この頃には額から汗が垂れる程にぐっちょりだった。
清々しいマイバイクでの旅の代償は高くついた。
その後、30分かけて税務署に到着。
もうケツが痛い、足もパンパンなのだ。
心地よかったのは最初だけだった…
夏の日は 気持ちいいのは 始めだけ
(これだけだと何の事かさっぱり)